第24回 フェスティバル・プラットフォーム賞 講評
世界が、天から降ってくる。そんな未曾有の体験を求めて。
2020年は、全世界が新型コロナウイルスの脅威にさらされるなか、全世界34カ国から、過去最多の114作品がエントリーし、大変、白熱した審査となりました。具体的な内訳を記しておくと、ジオ・コスモス カテゴリーが41作品(前年22作品)、ドームシアター カテゴリーが73作品(前年24作品)と、前年比2倍から3倍といった応募数で、やはり近年は、全天球映像のようなフォーマットの表現が、昔に比べて一般的になってきたのだな、という印象と、世界中の多くのクリエイターが、このフォーマットでの新しい表現を模索したがっているのだな、という兆候を感じる年となりました。ジオ・コスモス カテゴリーにおいては、近年、デジタル系の表現が数多く集まるなかで、今年は、アナログ的な、人間の手触り感が感じられるような作品が多かったのが印象的です。このカテゴリーでの受賞作『ちぎる』も、そのひとつです。人がちぎった紙を、さまざまな色と触感のコラージュで、球体表面にアニメーションを展開していく作品に、多くの審査委員の心が動かされました。この1年、非接触や人との距離を求められることが多いなか、人との触れ合いや温もりを感じる本作品に、多くの人が共感し、癒され、心動かされるかもしれません。ドームシアター カテゴリーにおいても、さまざまなアイデアと技術で、さまざまな表現を模索した多くの作品がエントリーし、音楽と映像の融合表現、ストーリーテリング、ライブパフォーマンスなど、挑戦的なクリエイティブ表現が数多くありました。また今年は、これまで応募が少なかった中東、南米、東欧、アフリカなどから、多くのアイデアが寄せられたのが印象的です。今年の受賞作となった『L'alter Monde』をはじめ、広範囲の視野とともに、細部に至るまでの精巧で高解像度の世界がドーム全体に行き渡り、音楽とともに天から降ってくるような錯覚に襲われるような体験は、このカテゴリー独特の醍醐味だと言えます。