第25回 マンガ部門 講評
マンガ表現の 多様性は無限
コロナ禍が残念ながら続いたこの1年間は、数回の自粛を余儀なくされたため普段よりは多くのマンガを読んできたつもりでしたが、そこはどうしても自分の好み、興味範囲や研究領域から視野が狭くなっていました。今回審査委員を務めることになり、硬直気味の私の「マンガ観」がリセットされたような気がして、私自身にとっても良い機会となりました。これも応募された皆様のおかげです。国内外から数多くの優れた作品に触れることができて光栄です。
さまざまなストーリー設定、多様な物語性、画風の幅広さと芸術性の高さ、おもしろくてたまらない作品が、世の中にこんなにも多いことに感激もしました。それゆえに多くの作品を読み終え、審査するとき、この豊富なセレクションから数作品を選ばなければならないとなるととても悩みました。ほか4人の審査委員の先生方と相談しながら慎重に審査を進め、多少意見が分かれたとしても、この審査結果に私自身は納得できています。
今回の受賞作品や推薦作品を今後も多くの方に読んでいただければ、また、新しいマンガを発見していただくことになれば幸いです。推薦作品のなかには、テーマとして完全にフィクションのマンガもあれば、社会問題である、パンデミック、孤独死、セクハラ、児童虐待、ゴミ屋敷などに触れるマンガもあり、どれも独特な作風で興味深いものばかりです。社会問題を取りあげているにもかかわらず説教っぽさもなく、ドキュメンタリーとして、また同時に娯楽として読んだりと、さまざまな楽しみ方ができ、とても勉強になりました。教壇に立つ者として、その一部はゼミ生とも読んでいきたいと思います。
プロフィール
杉本 バウエンス・ジェシカ
龍谷大学国際学部国際文化学科准教授
社会学、文化人類学 カルチュラル・スタディーズ。ジェンダー論。1997年来日(MEXT国費留学生)、1999年大阪大学大学院人間科学研究科入学。2002年から21世紀COEプロジェクト研究員、2006年京都精華大学マンガ学部助教授、2007年博士課程終了。2011年京都精華大学国際マンガ研究センター研究員、2014年龍谷大学国際文化学部専任講師、2017年龍谷大学国際学部准教授。