第18回 マンガ部門 講評
次代へと伝わる・伝えるマンガ作品を
文化庁メディア芸術祭は、映画祭などと同様、自ら応募した作品が審査されるという形式である。マンガ部門が、他部門や映画祭と大きく異なるのは、「完結していない作品が多数応募される」という点だ。これは日本マンガの場合に雑誌連載から単行本化という形で発表されることが(まだ)多く、また、海外からの応募が(まだ)少ないことを意味している。審査委員も最終三年目、年度を代表し、次代へ伝えるべき作品を選ぶべく全力で臨んだ。応募する方にも「時代をつくり、次代へ伝える意志」をもっていてほしいと考えている。今年度応募総数は700作以上。普段から読んでいるとはいえ、ほぼ二か月で数百の新しい作品に目を通すこととなり、応募数は、現行の審査の限界値に達しつつあると思われた。最初に、審査委員の一致した支持を得て大賞が決定した。作品の終幕は、フェリーニ風に余韻嫋々(じょうじょう)、あえて弱いところを挙げれば、設定から想起されるものを越ええなかった点だろう。優秀賞には混乱や困惑が描かれる作品が並んだ。新人賞の作品はどれも男性の委員と女性の委員とで票が割れがちであったが、議論が尽くされた結果である。入賞作に限らず、心身の欠損や喪失が描かれる作品、単巻で読み応えのある作品が多かったことが心に残った。審査委員会推薦作まで見渡せば、日本マンガの主流派である学園・スポーツ・格闘・恋愛・ファンタジーマンガもあり、海外作品、ウェブ・同人誌作品も入ってきて、ジャンル・内容、完結作・連載中の作、長・短篇がさまざまに花開き、競い合っている。突出した作品が孤峰として点在するのではなく、悠々たる山脈が形成されているという印象だ。2014年という時代の空気がパッケージされていると思えるが、どうだろうか。ここに挙げられなかった応募作にも、次代につながる種(タネ)が埋まっていよう。その発芽と成長を作家の側に期待し、それらを見逃がさないことを次年度審査委員に託す。