第20回 アニメーション部門 講評
アニメーション表現への期待
今年度から審査委員として参加したが、応募作品の質と量には驚いた。特に短編アニメーションはさまざまな表現方法と、短い尺から30分近い尺まで559作品もの応募があった。本来、同じ土俵での審査が困難とも思えるので、評価するのは極めて難しい作業となった。しかし、それこそが本芸術祭の魅力であり、私としても刺激のある審査作業であった。主に、「ストーリー」「モーション」「芸術性」「斬新さ」「技術力」「インパクト」「感動」、これらの審査基準でこの難題に取り組んだ。総評として、非常にクオリティの高い作品が、プロ・アマ問わず集まった印象であった。これは、「技術力」の高さの表われであり、業界の未来への成長が見てとれた。しかし、「おっ」と唸るような輝きある作品は数が多くなく、「斬新さ」「インパクト」という面では物足りなさを感じた。見慣れた表現スタイル、「物語」の凡庸さ等が、理由に上げられる。芸術祭と謳うこのコンペに、新しいことへの挑戦が垣間見える作品が少ないのは、個人的には残念に思う。作品としては、新海誠の現代の感覚を織り交ぜた物語と、煌びやかな光と色彩豊かな表現の到達点でもある『君の名は。』、絵画のようなタッチが動きだす、アニメーションならではの魅力に溢れた『父を探して』が、印象的で完成度が高かった。国内外の学生からも、多くの作品の応募があった。大学などの積極的な人材育成が、実を結んでいるからであろう。しかし、大学によっては、比較的同じテイストの作品が見られたことは、気になる点であった。若さ溢れる破天荒で独自な表現に、今後は期待したい。最後に、受賞作品以外でも、選に漏れた作品にも素晴らしい作品があり、受賞しなくても価値ある作品が数多く存在したことをお伝えしたい。応募者は気落ちせず、自分の作品に自信と誇りを持っていただきたい。そして、さらに素晴らしい作品を、今後生み出してほしいと願う。