第14回 アニメーション部門 講評
より豊かな制作環境づくりの必要性
アニメーション部門は外国作品を含め425本の応募があった。今年の特徴は劇場公開などの長編が増えて、短編、TV、オリジナルビデオアニメーション(OVA)はほぼ前年並み。海外からの応募がやや増え、特にフランスからの応募が56本と、前年の21本から急増した。
メディア芸術祭は、応募作品のみを審査する芸術祭なので、とにかく応募していただかないと審査の対象にならない。関係者各位のご協力を切に願うばかりである。
ちまたでは昨今TVアニメーションに元気がないといわれる中で、湯浅政明監督の『四畳半神話大系』は動きのダイナミズムと斬新なグラフィックスに裏打ちされた物語の進行が圧倒的だ。脚本がいい。新しくて痛快無比なエンターテインメント作品だ。
片渕須直監督の『マイマイ新子と千年の魔法』と原恵一監督の『カラフル』も今年の大収穫であった。 短編作品においては、世界中から実に多種多様な作品群が競い合い、つくり手の層の厚さを感じた。 外国からの応募作品には、社会的なテーマを扱った助成金による制作も多い。プロデュース能力の差なのだろうか。日本の短編はよくも悪くも、もう少しテーマが個人的であり、この特徴を生かせる舞台がなかなかないのが難しい。
アーティスティックな短編を自主制作する以外は、50年前に我々が経験した状況とさして変わらない。中心は、子供向けTV番組やTVのCM。増えたのはPV(プロモーションビデオ)とWeb系ぐらいであろうか。何かいいアイデアはないものだろうか?
プロフィール
古川 タク
1941年、三重県生まれ。TCJ、久里実験漫画工房を経て、70年代よりフリーのひとコママンガ家、イラストレーター、アニメーション作家として活動。アヌシー国際アニメーション映画祭審査員特別賞、第25回文藝春秋漫画賞、文化庁メディア芸術祭優秀賞など受賞、紫綬褒章受章。東京工芸大学客員教授。近著に古川タク瞬間漫画集『ブルブル』(文源庫)、絵本『かんがえるのっておもしろい(かがやけ・詩─ひろがる ことば)』(小池昌代編、あかね書房、2008)など。