第16回 アニメーション部門 講評
映像表現のさらなる進化と発展を求めて
アニメーション部門は世界中から年々応募作が増加しており、今年も受賞候補を絞り込むのに嬉しい悲鳴を上げることとなった。デジタル技術の進化が非常にわかりやすく、見た目の質に反映しやすい分野であるため、年を経るごとに高水準の作品が増えている印象がある。短編応募作は国際化が著しいが、日本作家の実力も相当なものだと感じた。大賞作の『火要鎮』は江戸時代の大火という「和」の文化をアニメーション映像として再現する試みが、『AKIRA』で国際的に著名な作家・大友克洋から発せられた点が興味深い。「日本独自のアニメーション」には未開拓の部分が多く残っているのである。
第14回(平成22年度)、15回(平成23年度)ともにテレビアニメーションの成果が突出したが、今回は「2012年はアニメーション映画の当たり年」と言われるほどタイトル数が急増した世情を反映し、劇場用作品が目立つ。3.11前からの企画が多いはずだが、"生命とその継承"を主題にした作品が多いのもひとつの傾向だろう。キャラクター含めてCGの用法を一歩深める挑戦的な作品も多い。優秀賞受賞作『アシュラ』は極限状態での生死を扱ったシビアなテーマを反映し、ブレイクスルーの予兆を感じさせる表現力を持った作品で、今後の転機となることが期待される。同時に「手作り感」を重視した作品も多い。アニメーションとしての柔らかい動きを重視した優秀賞受賞作『おおかみこどもの雨と雪』など作画の豊かさが感じられる一方で、新人賞の『LUPIN the Third ~峰不二子という女~』など線のタッチを活かした作品もあって、実に多彩であった。
多種多様な技法をハイブリッド化した表現力の幅広さということでは、今が「旬」であろう。例年のことではあるが、審査委員会推薦作品まで含めて全容をぜひ確かめて、この豊かさを実感していただきたい。そしてその全体像が発するオーラが新たなクリエイターを触発し、ますます応募作が発展的に増加することを切に願っている。