第22回 アニメーション部門 講評
刺激を求めて
今年の中長編アニメーションはまとまりの良い作品が多かった。特に優秀賞の『ペンギン・ハイウェイ』『ひそねとまそたん』『若おかみは小学生!』は完成度が高い。ただ『大人のためのグリム童話手をなくした少女』のような刺激的な作品が少ないのが寂しかった。一方短編アニメはバリエーションに富んでいて楽しめた。大賞の短編『LaChute』は地獄絵巻のような不気味な世界観で、ルーズなショットは観客に何を見て何を感じるかを求め、弦楽器の不協和音が異物感を与えて刺激的だ。優秀賞の長編『大人のためのグリム童話手をなくした少女』はとても新鮮な表現で、アニメーションとは何だったのかを考えさせられる作品で私の一押し。簡略化された映像が第20回の優秀賞作品『父を探して』を思い出させるが、本作は未完の荒々しさが醸し出す情感に心打たれる。1コマでは部分を描き、動画として繋がったときにその絵が現れるという省略手法で、この荒く不安定な映像は主人公の感情と重なる表現ともなっている。余白の多い本作は情報過多なアニメーションに慣れ親しんだ人にこそ観て欲しい刺激的な作品だ。短編のおすすめは『THELOSTGARDEN』で、美しい絵本のような映像と豊かなイマジネーションが、シンプルで声高ではない素敵な物語をつくり上げている。また『LoveMe,FearMe』は粘土という素材を生かしきったアニメーション。シンプルながら喜怒哀楽も上手く表現されていて、深読みすれば時の流れへ広がりもする。ほかには、普通の物語を映像美で乗り越えた『BlueFlight』や、コラージュ的映像と音響が上手く化学反応したインパクトの『32-Rbit』、そして圧倒的な画力の新人賞『AmIaWolf?』が気になる作品だ。またネット配信のシリーズ作品『DEVILMANcrybaby』はテレビでは放送できないかもしれないエログロな表現を含め、人間の欲望などが重層的に混在していて興味深い。なおこの作品はフラッシュアニメを使って少人数で制作していることにも注目したい。