第24回 アニメーション部門 講評
デジタル時代に響く、心と言葉と映像
2020年は新型コロナウイルス感染症拡大のために、創作・制作において非常に大きな負担が強いられた年だった。そんな困難ななかで、ご応募下さった方へ感謝申し上げたい。そして、素晴らしい作品群に出会うことができたのは幸運であった。昨年の講評では、長編映画や短編と異なり、長いスパンで物語が進むテレビシリーズは、どのエピソードを応募するかによって審査が難しいことに言及したが、今年はテレビシリーズである『映像研には手を出すな!』が大賞を受賞したことは画期的であり、嬉しく思った。プラットフォームに関して言えば、最近はNetflixなどの配信による長編作品も増えている。外国語の字幕付きで世界同時配信によって届けられるなど、映画やテレビシリーズの枠組みとは異なるプラットフォームを企図してつくられた作品(『泣きたい私は猫をかぶる』や『日本沈没2020』など)は挑戦的で刺激的な物語、演出があった。最近の特徴として、ソーシャル・インパクト賞『ハゼ馳せる果てるまで』、審査委員会推薦作品『Mela!』など、特にネットで発表されるミュージックビデオ的なアニメーション作品も挙げることができる。スマホ画面で気軽に楽しめるアニメーション作品として、映画やテレビとはサイズもモビリティでも異なるスクリーンで展開する作品群が、今後どのように展開されるのか期待したい。女性が主人公の俊英な作品にも出会えた。優秀賞の『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、『泣きたい私は猫をかぶる』、『マロナの幻想的な物語り』では、大切な人に思いを伝えることの難しさとその思いの大切さが描かれている。新人賞の『かたのあと』は、同性に対する女性の思春期の心の揺れを丁寧に描いており、その揺れが鉛筆の線描と相まって印象的だ。同じく新人賞『À la mer poussière』もフェルト人形で描く母子家庭における母の哀しみと子どもたちの寂しさが、恐ろしいまでに美しく伝わってくる。どれも2度見たくなる作品であった。