23回 アニメーション部門 講評

多様なアニメーション表現の魅力

今回初めて審査委員を務めて、4カ月かけて世界中からくる作品を一つひとつ見ることになり、改めてアニメーション表現は多様であり、どのような表現の仕方もありなのだ、ということを実感した。ドラマ、コメディ、ドキュメンタリー、実験、抽象、とさまざまなジャンルでさまざまな表現があり、イマジネーションも豊かで見応えがあった。また、そういうジャンルに括れないものにも興味深く惹かれるものがたくさんあった。受賞作品については大賞の『海獣の子供』はすごいというよりすさまじい映像に圧倒された。優秀賞の『ごん』は素材との格闘の果てにできた渾身の作品。成長とともに絵柄が変わるというアイディアの『ある日本の絵描き少年』は審査を忘れて感動していた。『ロング・ウェイ・ノース地球のてっぺん』は懐かしさと新しさが同居している魅力があり、『Nettle Head』は少年たちの秘密の儀式のような世界観に人間の不思議さを感じた。審査委員会推薦作品で印象に残ったのは、まるで音楽を目で見ているような紫色の美しい映像と深いテーマの『Purpleboy』、画面から墨汁が飛び散ってくるようなエネルギーの『LOCOMOTOR』、若者の絶望を静かに描いた『Mascot』、ドキュメンタリーというより愛についてのエッセイアニメーションと言えそうな、幸せな気持ちにさせてくれる『Bear With Me』、ゆれ動く少女の心の世界を描いた『Lola the living potato』、大らかでパワフルな『サイシュ~ワ』など。また、今回感じたのは日本人の技術と感性は素晴らしく、どこの国とも違う独自の魅力があるということ。海外の作家の作品が人間や人間の社会を描いているのに比べると、自然からインスピレーションを受けているものが多かったようにも思う。今の異常気象の影響を受けているのか、それとも、天災の多い国に住んでいる日本人は、もともと持っている自然への畏敬の念が作品にも投影するのかもしれない。そしてそれを新しい感性でアニメーションにしていることをとても嬉しく感じる。

プロフィール
横須賀 令子
アニメーション作家