第15回 エンターテインメント部門 講評
常に、表現へのあくなきチャレンジを
今年の審査は、各審査委員同士で「時代性」「革新性」「オリジナリティ」などを基準に進めることを事前に確認し合ってスタートした。その結果として、この受賞作品を見ていただければわかることだが、実にユニークな作品が今回も受賞するに至ったわけである。文化庁メディア芸術祭はメディアアートを軸としているため、より個人に近い意味としての「表現」に重きが置かれている。その傾向として、特に今年は受賞する作品のカテゴリーに偏依があったことを述べておきたい。
映像作品は例年に増してユニークかつ面白いものが多かった。また iPhone などのアプリ作品も、クリエイターたちの取り組みが熟成期を迎えつつあるのだろうか、完成度と遊び心の双方を失わず、かつ斬新なものが多く、審査会の空気が和まされたのが印象的であった。逆に残念だったのは、高評価を集めることができたゲーム作品や遊具が例年よりも減ったことで、旧コンシューマー業界が直面している課題を物語っているかのようでもあった。空前のスマートフォンとソーシャルのブームが、その背景として大きく影響していることは推測するに難くないけれど、私自身がゲーム業界に身を置く者だけに、この状況は残念でならない。その中で唯一、新人賞に残った『デジタル戦士サンジゲン』は、個人の作品らしい新しい切り口の実験的な作品で、コマーシャリズムという亡霊にとらわれない「あたらしさ」の片鱗が随所に感じられた。
ハードウェアの進化やネット環境など時代の潮流に依存しやすいメディアアートではあるが、「アート」である以上、表現者らによる「表現へのあくなきチャレンジ」は決して損なわれてはならない。日本を元気にする意味でも、来年は更なるクリエイターの方々の活躍に期待する次第である。