第20回 エンターテインメント部門 講評
来るべきエンターテインメントへ向けて
「メディア芸術」の「エンターテインメント」部門という枠組み自体が限界に来ているのではないかという感想を持った。デジタルメディアが急速に発達したこの20年の歴史的な特殊性を考えれば、「メディア芸術」という設定には納得できるし、そのなかで「エンターテインメント」がいかなる方向に進むのかも大きなテーマであったと思う。それまでの「エンターテインメント」はデジタルメディアの存在を抜きに発展してきたわけだから、ただなりゆきを見守るだけではなく果敢なチャレンジを積極的に称揚することの意義は大きかっただろう。昨年の大賞を知ったときにもそのことを強く感じた。けれども、私自身が初めて審査をすることになった今年は、むしろ「エンターテインメント」のあり方自体を捉え直す必要を感じた。そのことが炙り出される結果が出たように思う。選別のための厳密な定義付けをすべきだと言うのではない。定義なら「人々を楽しませるもの」くらいで十分だろう。問題は今の時代の「楽しみ」とは何かということで、「コンテンツ」を求める人の数をその消費に疲れ始めた人の数が上回ったとき―それが今なのではないかと思うのだけれど―、次に来るべきものは何なのか、と考えさせられた。昨年の大賞『正しい数の数え方』の岸野雄一が実践しているコンビニDJなどはその意味で大きな価値転換をもたらしていると思っていたが応募はなかった。ほかに今年の事象でいうと、『この世界の片隅に』(監督:片渕須直、原作:こうの史代、2016)の原作からクラウドファンディングを経由して劇場公開の商業映画として成功したことの、その「流れ」に大きな希望を感じた。応募という行為に結び付きようのない、人のつながりの全体性が備わっているように思ったからだ。そういった部分にも光を当て、新しい評価軸を顕在化させるにはどうすればいいのか。ただ応募を待って応募してきた人に賞を出すというあり方も含め、新たな転換期を迎えているに違いない。