22回 アニメーション部門 講評

継続して制作することの意味

毎年これだけの作品が制作されていると思うと、アニメーションはまだまだ発展し続けている分野だと感じた。作品のフォーマットや制作方法が安定していないことが、変化し続けていることが、原因のひとつだと思う。最先端は相変わらず安定しないまま大変な状態である一方、タブレットでもアニメーションの制作ができるようになり、入門者向けの部分では簡単に制作を始めることができるようになってきた。制作者の裾野が広がっていることが応募された作品全体を観ると実感できた。賞の選定は比較的スムーズに決まった。審査委員の意見がそれなりにまとまっていたのかもしれない。正反対の評価になった作品も、そういった見方もありだなと思うことができた。私のなかにも勝手に師事した先生がいて「動いていないですね、外連味が足りない」と言ったり、「血の色をしていない映像だ」と言ったり、「商業的すぎますね」と言ったりする。アニメーションの評価の軸はいろいろあって、人それぞれで良いと思っている。コンペティションによって受賞する作品が変わるのも、応募された作品がそもそも違うこともあるが、そのときの審査委員による部分が大きいので、今回受賞に至らなかった人も来年度も諦めずに出品してほしいと思う。とはいっても大賞を取る作品はやはり素晴らしいもので、『LaChute』はアニメーションならではの現実ではあり得ないループする動きの積み重ねがとても魅力的だった。前回アート部門で審査委員会推薦作品に選出された際も同じような傾向の作品だったが、今作では物語性や世界構築といった新たな魅力が足されていた。大賞にふさわしい傑作だと思った。審査委員会推薦作品の中では『リズと青い鳥』が冒頭しばらく歩いている足元のシーンで、実験映画のような緊張感のある画面が続く傑作と感じた。また『Mom'sClothes』はコマ撮りすることで見えてくる動きが気持ちよくて、推薦しなくてはと強く思った。全体的に作者の成長を感じることができる作品が複数あり、来年以降がとても楽しみである。

プロフィール
木船 徳光
アニメーション作家/IKIF+代表/東京造形大学教授
1959年、神奈川県生まれ。東京造形大学造形学部美術学科卒業(絵画専攻)。2001年、東京造形大学着任。1979年木船園子とIKIFというユニットを組みアニメーションの制作を始め、実験アニメーションや映像インスタレーションなどの制作発表を続ける。80年代終盤より、CGアニメーション制作に携わるようになり、97年にIKIF+を設立。以後『メトロポリス』『イノセンス』『スチームボーイ』『スカイ・クロラ』等、さまざまなアニメーション作品の3DCG制作に参加。NHK教育プチプチ・アニメ『ぶーばーがー』(1995─97)、『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(3D監督、2000)、『立喰師列伝』(3D監督、2006)、『映画ドラえもん』(OPアニメーション制作・3DCG監督・スーパーバイザー、2007─09)。日本アニメーション協会監事、インターカレッジアニメーションフェスティバル(ICAF)実行委員。日本アニメーション学会、日本映像学会、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)会員。