第23回 アニメーション部門 講評
向き合うということ
今回初めての審査委員。まずエントリーされた作品一覧を眺めての感想。目立って長編映画が多い。確かに2019年、全国公開や単館上映などさまざまな作品のポスターが映画館を賑わせていた。本来のテレビの特別篇や単独の作品とは異なり、続編としての劇場、アプローチを変えての劇場。そんな作品が多く目についた。そんな場合、提出された映像のみ審査するというのはなかなか難しい。どうしても単独の作品に評価が傾くのはやむをえない。そんななかでも受賞作品や審査委員会推薦作品に推したものには何かしら「向き合う」真摯さを感じた。作品をつくるきっかけはいろいろある。日々思っていたことを形にするイメージが湧き出して、という人もいるだろう。僕らのような商業アニメの監督ならば「監督、こういう原作あるけどやりませんか?」みたいな場合もある。いずれにせよ、いざ作品をつくり出すときに必要なのは「向き合う」ことだ。自分に向き合う、原作に向き合う、表現に向き合う。大賞の『海獣の子供』は原作の向こうにある、言葉にならないイメージに真っ向から向き合う、その繊細かつ力強い制作者の姿勢を感じ、優秀賞の『ロング・ウェイ・ノー ス地球のてっぺん』はとにかく自然の大きさを描くんだという徹底した姿勢に惹かれた。基本、作品をつくるということは自分との対話なのだと思うが、結果的に今の少年少女たちに向き合う作品をつくり続けている新海誠さんは素晴らしい。今回からソーシャル・インパクト賞が新設された。世のなか、とりわけ若者たちに大きな影響を与えたという意味ではまさに『天気の子』はふさわしいと思う。 審査は紛糾はしなかったが、それぞれの作品のいいところをほかの審査委員の方々から聞き、そのうえで自分が推す理由を再確認し討議するなどさらに作品の理解が深まった気がする。