第15回 エンターテインメント部門 講評
「ゲーム」と呼ばない時代が来る
寄せられた作品群は特定の情報端末に集中し、コンパクトにまとまった内容のものが多かったが、個人で創作可能な制作環境が構築された結果としてか、個性的な発想の作品に出会うことができ選考も楽しめた。
文化・芸術には、良いものは変えないという価値観が存在するとともに、新しい流れを創っていく価値観も存在する。今回は普遍的な「遊び」のセンスと、アウフヘーベンする革新魂を選出基準として作品と触れ合っていった。小気味良い遊び感覚がさりげなく盛り込まれた、出しゃばらない風潮の作品に若者の感性と時代の流れを感じることができた。そして作品に触れた際の体験がいつまでも頭から離れないような、「新しいとしか言いようがない」そんな次世代を感じる作品創りを目指してほしいとも強く感じた。
また、映像・アプリ・ゲーム・遊具などの各カテゴリーを横断する内容の作品が多く見られ、遊べる映像だからゲーム、便利アプリであるが時々遊べるからゲームと、従来からあるゲームカテゴリーの境界線が見えなくなってきているのも一つの流れである。このことは実は、作者も受け手もゲームを意識せず、自由に大らかにメディアに接していることの証しであって、逆にゲームのこれからの可能性と広がりを示唆しているとも解釈でき、携帯電話機が多様な呼ばれ方になった経緯と考え合わせると、ゲームも別の呼ばれ方をする時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。
プロフィール
岩谷 徹
ゲームクリエイター/東京工芸大学教授
1955年、東京都生まれ。77年に株式会社ナムコ〈現:株式会社バンダイナムコゲームス〉に入社。80年、ビデオゲーム『パックマン』を制作。『パックマン』は「食べる」をテーマに制作され、世界中で高い評価を受けた。2005年には世界で最も成功した業務用ビデオゲーム機としてギネスブックから認定された。『パックランド』『リッジレーサー』『アルペンレーサー』『タイムクライシス』など50タイトル以上をプロデュースする。07年より東京工芸大学芸術学部ゲーム学科教授。日本デジタルゲーム学会理事。株式会社バンダイナムコゲームスフェロー。著書に『パックマンのゲーム学入門』(エンターブレイン、05年)がある。