19回 マンガ部門 講評

本年度の特徴と未来への展望

毎年回を重ねる度、応募作品数が増えているのはたいへん喜ばしいことだ。今年も1,000近くもの応募作品が集まり読むのが楽しみでもあったが、ひとつの作品でも複数巻にわたるものが多く、その膨大な作品数を審査するには時間的制約も多く、評価に差が出ないか不安もあった。そこは他委員の感想などを参考にし、意見交換を充分に行なった結果、補うことができたと思う。
ただ、しょせん人の決めることだ。好みも大きく別れる。その時の状況判断等で泣く泣く落としていったものも数多いが、なんともおもしろいほど、その年の特徴が出るものだと思った。まず、ウェブマンガと同人誌マンガの数は激減した。昨年は同一作者で何作もの応募が目立ったので、それがまず減ったせいかもしれない。同人誌は数こそ減ったものの、作品水準は非常に高く審査委員の胸を躍らせてくれた。プロになれない者がつくる同人誌、ではなく商業誌では扱われにくい芸術的、文学的作品が集まってこその同人誌というものが今年は数多く来た!自由奔放な想像力と技術力に圧倒されながら、愛でるように眺めては読ませていただいた。
反面、ウェブマンガでの作品傾向には今後の問題が山積みである。ウェブという新しいメディアに未来への期待を大きく寄せているが、紙マンガとウェブマンガを最終的に一緒にして審査しなければならないという問題は大きい。多くのプロの作品は単行本発行の後、電子配信というかたちをとっているため紙と電子の区分の意味があまりなく、ウェブではプロと素人との区分もよくわからないためか、総じてレベルが低めに感じられてしまう。そのかわり紙では絶対にできない作品もある。ただ審査委員によっては紙マンガでの作品レベルを求めるあまり、実験、研究段階での試作品として未来への展望を考慮する余地が少ないのが現状だ。私は審査委員であるが、マンガ家の心はなくしていない。ストーリーや技術的レベルが云々よりおもしろいものには単純に飛びつくし、未来に心をよせていきたい。紙ではできないマンガにより期待する。

プロフィール
犬木 加奈子
マンガ家/大阪芸術大学客員教授
1958年、北海道生まれ。87年に講談社『少女フレンド』増刊号にてデビュー。89年、講談社『サスペンス&ホラー』創刊時より雑誌表紙、巻頭を描き続け、代表作『不思議のたたりちゃん』(講談社、1992─)などを発表。92年には秋田書店、ぶんか社、リイド社、角川書店をはじめホラーマンガ誌が創刊され、それらすべての雑誌表紙、巻頭を担当。また作品がOVA化される。これまでに犬木加奈子漫画賞をはじめ、ホラー誌の選考委員や、漫画の日選考委員、日本漫画家協会賞選考委員を務める。2001年には、第1回日中民間文化交流に参加し北京の中国美術館で作品を展示。08年より大阪芸術大学客員教授。11年にはフランス、13年には銀座のギャラリーなどで展示を行なう。14年4月より東京藝術大学で講師を務める。16年、日本大学芸術学部芸術資料館にて「ホラー漫画家 犬木加奈子の世界」展を開催。