14回 エンターテインメント部門 講評

作品として摘出できない作品たち

ゲームの審査は難しかった。大作ゲームの続編を、どうとらえて評価すればよいのか? 新しいアイデアを小さくまとめた作品と、どう比較すればよいのか? 評価する軸がかけ離れ過ぎていて、比較できないのだ。しかしこれは単純に、圧倒的な新しい作品に出合えなかっただけのことなのだろう。率直に言って日本のコンシューマゲームは迷走している。一方でエンターテインメントの世界が枯れているのかといえば、そんなことはなく、日々僕らはさまざまなものに魅了されて生きている。ここ数年なら、ネットを使ったソーシャルな遊びにずいぶんと耽溺した。しかしそれらは単独で取り出して「作品」として評価できるものなのか? という疑問もある。今回審査員の支持を多く集めた作品たちは「作品」として摘出できない現在形のエンターテインメントの状況とリンクしたものたちだ。

プロフィール
伊藤 ガビン
編集者/クリエイティブディレクター
編集者・クリエイティブディレクター。