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第18回 エンターテインメント部門 優秀賞

3RD

インタラクティブインスタレーション

Hedwig HEINSMAN / Niki SMIT / Simon van der LINDEN

作品概要

インタラクティブインスタレーション作品『3RD』は、公共空間におけるソーシャルメディアの活用と、それに伴う知覚の変化に着想を得た作品だ。参加者たちは、鳥を模した“ヘルメット”を身に着けて、空間の中を歩き回る。ヘルメットの中のモニターには、外部のカメラを通じて俯瞰された自らの姿が映し出される。目の前にデジタルな分身が現れ、まるでゲームのように感じられる現実世界に、超・現実主義的な感覚が芽生えていく。ヘルメットを着用した参加者たちは、俯瞰的に捉えられたモニターの映像から、空間を把握しようとする。客観的な視点と、主観的な感覚のズレを感じながらも、他者や周囲の環境を知覚していく。本作は現実に対する新しい視点を投げ掛け、社会との新鮮な関係を築くものだといえる。

贈賞理由

体験者が手製の被りものを身に着けて、俯瞰的な視点から捉えた周囲の状況を頼りに、フィールドを徘徊する作品。そのくちばしに似た形は、触覚の鋭利化と動物の攻撃性、そして逃避距離を想起させる。主観的な視覚は遮断され、客観的な視点に置き換わるとともに、今ここにいる自分の体感との間にもどかしいギャップが生じる。本作は、ヘッドマウント・ディスプレイを使用した多くのバーチャル・リアリティ作品とは一線を画している。ここでの興味は、そこにある空間を、その中にいる生身の自分や他者が、情報を経由して捉えたときどのように感じるか? 主観と客観、視点のシフト、理解と体感の遊離、といった事柄についてだ。作者のこれまでの作品を見ても、空間の認識と体感、そのズレと一致などへの興味を一貫して抱いているようだ。ここに、はっきりとした仮説の提示はない。けれども、空間と知覚・認知への何らかの気付きの体験をもたらすだろう。(東泉 一郎)