第19回 アニメーション部門 新人賞
Chulyen, a Crow’s tale
短編アニメーション
Agnès PATRON / Cerise LOPEZ
作品概要
Chulyen(チューリェン)は、半分は人間、半分はカラスの姿をした生物で、その慈悲を欠いた目からもわかるように、傍若無人な性格の持ち主である。舞台となるのは、遠く北の大地の森と湖で、広がる夜空にはオーロラが描かれる。Chulyenは、巨人の乗っているカヤックを欲しいと思えば、それを奪い取ってしまうなど、興味の赴くままに行動するが、精霊たちに跡をつけられて─。Chulyenとは、北方のネイティブ・アメリカンの伝承に登場する、架空の生物で、本作もその物語を原作にして制作されている。シンプルだが時に荒々しいドローイングと実写が入り混じるモノトーンの描写で、独特のサウンドも携えており、強烈な世界観を醸しだしている。
贈賞理由
執拗なドローイングと実写の合成を使い、北極の近く、邪悪なカラスの精霊Chulyenを追う3人のシャーマンの不条理な物語は、悪夢のようで、謎を秘めながら、禍々しいパワーを発している。悪意に満ちていたり、純粋さのなかに不気味さを湛えていたり、複雑怪奇なキャラクターの表情が、潜在意識に働きかけ印象に残る。アニメーションによって、北米の神話を題材に湖と森の生態系のダークな内側の世界を創造しようという試みは、新鮮で興味深く、まだ荒削りな印象のなかにも未知の可能性を感じる。(山村 浩二)