第14回 アニメーション部門 優秀賞
カラフル
劇場アニメーション
原 恵一
作品概要
森絵都の小説をアニメ化。突然現れた天使のような存在、プラプラによって、天上界と下界の間で漂っていた「ぼく」の魂は、自殺してしまった中学生の少年・小林真の体に入り込み、人生の再挑戦をすることに。真が死を選んだ理由を知り、真と同じ生活を体験する中、この再挑戦の意味を考えるようになった「ぼく」は「ある事」に気付き始める。
贈賞理由
主題を純化する装置としてのアニメーション
誠実な作品である。
これまで、ファンタジーの世界にリアルな皮膚感覚を織り交ぜることで圧倒的評価を獲得してきたこの作家の今現在に於ける到達点は、物語の設定に必要なある 1点を除いて、すべて現実に存在する要素で再構成しようとする作風にあるといえよう。そのようにつくられたリアルな表層を見る時、われわれはこの題材をアニメーションで表現する意味を見失うかもしれない。
だが、忘れてはならない。リアルに見えるこの表層もまた、作家のつくりあげた虚構であることを。アニメーションという表現装置で現実世界より不純物を取り払い、主題を浮き彫りにしなければ、この物語が抱える真の痛みは表現できなかったであろう。
その痛みを純化すべく、己の理想を静かに、力強く貫くその姿勢は、何よりも作家の現実世界に対する誠実さの顕れなのだ。