脚本・監督:大友克洋│キャラクターデザイン・ヴィジュアルコンセンプト:小原秀一│演出:安藤裕章│作画監督:外丸達也│エフェクト作画監督:橋本敬史│美術:谷口淳一/本間禎章│CGI 監督:篠田周二│画面設計:山浦晶代│音楽:久保田麻琴│プロデューサー:土屋康昌(株式会社サンライズ)
© SHORT PEACE COMMITTEE

第16回 アニメーション部門 大賞

火要鎮

短編アニメーション

大友 克洋

作品概要

18世紀中頃の江戸の町。商家の娘「お若」と幼馴染の「松吉」。惹かれ合う2人であったが、松吉は家を勘当され町火消しとして生きる。そんなさなか、お若の縁談の話が進み始めた。松吉への思いを忘れられない彼女の狂った情念からの行動は、大火事を引き起こし江戸の町を焼き尽くす。その大火のなかで再びめぐり合う2人。巨大都市江戸の大火を舞台としたスペクタクル。本作は、伝統的な日本画の画風を映像表現のモチーフとし、舞台である300年前の東京(江戸)の風俗や道具、生活を再現する描写にこだわった。また、作画のアニメーションの表現と3DCGによる表現を融合させ、斬新な映像表現を実現した。

贈賞理由

江戸町火消したちの木遣が流れるなか、一巻の絵巻物が紐解かれる。現われたタイトルに「戯作活動錦絵」とある。わくわくする。歌川広重や渓斎英泉の名所絵を思い出させる大川端のパノラマ絵が、絵巻が解かれる方向にスクロールされる。両国橋から神田錦町へ。やがて風景画は大店の庭に遊ぶ男の子と女の子に焦点を合わせていく。菱川師宣の浮世絵のように美しい。静かでとびきり美しい絵がこれから展開される情炎の物語への期待を抱かせる。景色が突然後ろに戻される。ここでカメラアイだったことにはたと気がつく。
江戸の振り袖火事と呼ばれた「明暦の大火」や「八百屋お七の大火」などを題材に作られたフィクションが華麗にドラマチックに繰り広げられる。16対9の比率の画面サイズがこれほどピッタリの作品はない。歌舞伎を2階の最前列で鑑賞しているような、昔のジオラマのスペクタクルな画面を追体験しているような特別な興奮があった。日本発のアニメーション。