第16回 功労賞

江並 直美

電子出版物プロデューサー

プロフィール

1956年生まれ。グラフィックデザイナーとして活動を開始し、81年にプロペラ・アート・ワークス社を設立。アートディレクター・博覧会展示映像監督として活躍し、92年ジェノバ船と海の博覧会日本館では「マルチメディアグランプリ展示映像部門・最優秀賞」を受賞。同年、デジタル作品専門ギャラリー「DIGITALOGUE」を開設、翌93年にデジタローグ社設立。電子メディアを用いた表現活動がいまだ一般的ではなかった時代にインディペンデント・メディアとしてのCD-ROMの可能性に着目し、写真家・五味彬の写真集『YELLOWS』を出版。この一作目がセンセーショナルな話題を呼んで大ヒットを記録し、シリーズ化される。その後、荒木経惟、日比野克彦、タナカノリユキなどのアーティストとも組み、作家性の高いタイトルを次々とリリース。96年制作『ジャングルパーク』ではインタラクティブ性を前面に押し出し、電子メディアならではの作品に新境地を拓き、また『フォントパビリオン』シリーズでは、多くの才能ある新人にデビューの途を拓くなど、CDROM黎明期に新しい表現分野を切り拓いた。98年『京の庭』で78th New York ADC New Media部門「銀賞」を受賞するなど受賞歴多数。同年には、MILIA賞’98マルチメディア国際審査員を務め、またコンピュータによるグラフィック表現の指南書『OUTOF DESIGN』の出版も行なうなど、幅広く活動を展開した。99年度マルチメディアコンテンツ市場環境整備事業に採択され制作した『マンダラ・コスモロジー』は、2000年に、AMD Award「Best Visual Designer 賞」、80th New York ADC「Merit 賞」、並びにMultimedia Grand Prix2000「教育・教養賞」を受賞。02年には江並本人がAMD Award「功労賞」受賞。また05年にはAMDにおいて「江並直美賞」という新人賞が創設され、毎年優秀な新人に対し授与され続けている。

贈賞理由

1990年代にCD-ROMというパッケージ形態で、たくさんの作品が発表された。そのなかで、その後のデジタル表現に多大な影響を与えた作品たちが江並直美氏のプロデュースによって生まれた。五味彬の写真集『YELLOWS』は大ヒットとなり、オンスクリーンで見る写真の可能性を開いた。またデジタル表現専門のギャラリーをいち早く開設するなど、その功績は忘れてはならないものである。彼の90年代の発言の多くは、現在に続くデジタル表現の可能性と問題点を予言的に語っている。