第17回 アニメーション部門 優秀賞
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
劇場アニメーション
庵野 秀明
作品概要
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』3部作および『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、全4部の長編アニメーション映画。その第1部『:序』(2007年)、第2部『:破』(09年)に続く第3部が本作『:Q』である。そして次の第4部『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、シリーズ完結を予定している。この第3部では誰もが予想できなかった斬新な展開を提示しながら、未知なる領域へと突入。同時に「主人公・碇シンジの物語」として、すべての要素を収斂している。映像も過去のテレビシリーズや劇場版の画素材を使用せず、スコープサイズ(1:2.35)を採用した完全新作となり、この4部作が1990年代の『新世紀エヴァンゲリオン』の単なるリメイクとは全く異なる地平を目指していることが明らかとなった。ついに真の姿を見せはじめた「新たな物語」が、完結編に向けて動きはじめる。
贈賞理由
映画はファーストカットが命。シリーズ第3部となる本作も、“何かがやってくる”というワクワクするカットで始まる。それは、“いつもの風景”が実は危険に満ちていることを実感させるものだ。その演出を貫くポイントは、日常風景をいかに“普通”に描くかという点である。この“普通”ほど難しいものはなく、アニメーションの場合はその表現の違いが顕著に表れ、スタッフの力量が問われる。鉄塔の向こうで戦うヱヴァ─団地の向こうの異次元・非日常である“異物”が日常に混ざる違和感を表現するには、徹底的に「日常芝居(風景)」を“普通”に表現する必要がある。この演出ができなければ、本作のように秀でた作品にはならない。スタッフロールを見て納得した。優秀な仲間たちと一緒だからこそ、常に新しい扉を突破できる。その環境のためには、ヒットさせて資金を集めなければならない。アニメーションに憧れたクリエイターたちの本気を感じた。(森本 晃司)