©︎ Seiichi Tokiwa/MAG Garden

第25回 マンガ部門 新人賞

きつねとたぬきといいなずけ

トキワ セイイチ[日本]

作品概要

高尾山から電車に乗って平凡な会社員・田中のもとへやってきた、人の言葉を喋る子ぎつねと子だぬきは、彼のことを自分たちの「いいなずけ」だと言う。驚く田中だが、来訪のたびに寝床をつくったりともに食事をとったり、はたまたダンスや相撲をする姿を見て、次第に打ち解けていく。高尾山では子ぎつねと子だぬきのほかにも、カラスやムササビといった動物が学校や牢屋などを備えた土地で暮らしている。そんな2匹でも料理やお金のことは知らないらしく、人の生活の当たり前に無邪気に切り込んでくる。おませな子ぎつね、能天気な子だぬきと人との軽快なやりとりを、丸みを帯びた絵柄でいきいきと描いた現代ファンタジーともいえる作品。

贈賞理由

一般に新人賞とは、若くてまだ未熟だが将来性を買って賞を与える意味合いが強いものである。しかしマンガに関してはその限りではない。トキワセイイチ氏は長い時間をかけ、試行錯誤しながら自分の個性あふれるマンガをほぼ完成させた新人マンガ家。描くマンガは素朴ではあるが決して古くなくストーリーも優しい。また、隅々まで気を使って描かれたきれいなペンタッチのキャラクターと背景が読む者にどこか安らぎを与えてくれる。今までありそうでなかったマンガである。氏の将来性と今後の作品に期待する。(倉田 よしみ)