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第25回 アニメーション部門 優秀賞

漁港の肉子ちゃん

劇場アニメーション

『漁港の肉子ちゃん』制作チーム(代表:明石家 さんま/渡辺 歩)[日本]

作品概要

母と娘の2人家族、肉子とキクコ。肉子は食いしん坊で能天気、情にあつくて惚れっぽく、男に騙されやすい。果ては男を追って北の漁港にたどり着き、船で暮らすことに。キクコは思春期の小学5年生、母の強烈なキャラクターが最近は恥ずかしくなっている。容姿も性格も対照的な母娘が、たくましく精いっぱいに生きる姿をハートフルに描くコメディ。累計発行部数35万部超のベストセラーとなった⻄加奈子による同名小説を、タレントの明石家さんまが企画・プロデュースし、西へのオファーから5年越しに映像化を実現させた。アニメーション制作はSTUDIO4℃、監督は渡辺歩、キャラクターデザイン・総作画監督には小⻄賢一と本芸術祭の第23回アニメーション部門大賞『海獣の子供』からの実力あるスタッフが揃い、母娘の暮らしをいきいきと鮮やかに、自然の残る漁港の景色と季節の移り変わりを光あふれる美しいアニメーションで表現した。

贈賞理由

この作品を観た後は、世界がとても愛おしく思える。本作は、直木賞作家西加奈子の原作を明石家さんまが企画・プロデュース、監督に渡辺歩、そして肉子役に大竹しのぶ、キクコ役に声優初挑戦のCocomi、ということで話題が多かったが、その神髄はビジュアルのあるマンガ原作などとは別の難しさがある小説原作を、アニメーションで見事に表現したところにある。嫌なことに執着せず「普通が一番ええのや」と言って人生を受け入れる肉子ちゃんは、周りをほっこりさせ、思春期特有のキクコの不安や悩みもかき消してくれる。非常に丁寧に描写される焼き芋やフレンチトースト、焼き肉のシーンもキクコの心を溶かす効果として際立つ。また、色彩豊かで写実的な漁港の町に挿入される自然の生き物たちの語りかけがつくり出す幻想的な風景に、一見違和感を生み出しそうなコミカルな肉子ちゃんの動きも、不思議なほど画面に溶け込んでいる。暗くなりがちな肉子ちゃんと旧友みうの人生を悲壮に描くシーンも見事だった。(須川 亜紀子)