第23回 エンターテインメント部門 ソーシャル・インパクト賞
移動を無料に nommoc
アプリケーション
吉田 拓巳 [日本]
作品概要
移動は手段であり、乗り物を使うにはお金が必要という常識を覆し、移動に新しい付加価値をもたらすサービス。ユーザーは、スマートフォンアプリでユーザー情報を登録、目的地を選択して配車し、車内ディスプレイの広告を視聴しながら移動する。外と切り離された車内空間では、場合によっては音楽やフレグランス、飲食物やメイクアップといった体験型広告も展開される。繰り返し利用することでAIがユーザーの行動パターンや嗜好を学習し、おすすめの行き先や情報を提案できるようになる。メリットはユーザー側だけでなく広告主側にもあり、登録時のアンケート回答にて性別や年齢、職業や趣味嗜好といった属性を取得し、配車エリアを絞ることで、精緻なターゲティングが可能となる。移動マーケティングデータを持つO2Oメディアという新しいビジネスモデルとスキームを実装し、ユーザーへ新しい移動体験の提供を可能にした。
贈賞理由
この賞は今年から新しく創設された。社会のなかに実装され、メディアテクノロジーのあり方や人々の行動様式などに変化をもたらし、大きな影響を与えた作品に対して贈られる。本受賞作品は、まさに社会で機能すべく実装された無料で乗れるタクシー。私たちはお金を払って、映画館の中でも、タクシーの中でも、興味のない広告を自動的に見せられている。こうした既存の広告のあり方に異を唱え、広告の載せ方にまで昇華。この実用的インパクトを、文化庁メディア芸術祭として無視することはできない。テクノロジードリブン。日本はとにかくこれが苦手だ。技術駆動型のアイディアが、もっと社会に実装されてゆくべきだ。Uberはアメリカから生まれた。「nommoc」は日本の若き作家が生み出した。受賞おめでとう。(川田 十夢)