第18回 エンターテインメント部門 優秀賞
handiii
ガジェット
近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉 [日本]
作品概要
『handiii』は3Dプリンターで出力したパーツと、スマートフォンを制御に利用した「気軽な選択肢」をコンセプトとした筋電義手だ。筋電義手とは、腕の皮膚上で計測される筋肉の微弱な電気信号(=筋電)を介して、直感的に操作できる義手のことである。技術そのものは戦前からあったが、市販価格は非常に高価であり、普及率は極めて低かった。本作では3Dプリンターとスマートフォンを活用することで、材料費を3万円以内に抑えている。またデザイン面においても、既存の義手が人肌に似せているのに対し、本作は腕時計やスニーカーのように使う人が気分や場面に応じて色やパーツを変更できるようになっている。更に外観だけでなく、指先にICチップやマイクを組み込むなど機能面の拡張を加えることで、あらゆる人々が羨ましいと思う義手を目指す。現在は実用化に向け、ユーザーとともに開発を進めている。
贈賞理由
『handiii』 は筋電義手(筋肉の電気信号で操作する義手)であり、義手を巡るプロジェクトだ。高機能・高性能を目指すことで、へヴィかつ高価になりがちだった筋電義手の実用化を図る。パーツを3Dプリンターで作り、電気信号の読み取りはスマートフォンで行う。機能を必要最小限に制限し構造をシンプルにした。これらが生み出すのは製造コストの削減だけではない。個人で修理交換が可能になる。取り回しが容易になる。カスタマイズの可能性が向上する。ファッションとして機能させることができる。義手そのものを強く高度化するのではなく、「弱さ」を強みとし、他者と関わることで活きてくるオープンなモノへと目指す方向へ転換した。失われたモノの復元にとどまらず、新しい機能としての義手になり得るだろう(プロジェクトの映像を見ていると「第三の腕」という方向性も想像してしまう)。補助装置を超えたガジェットとしての可能性を指し示した。ワクワクする。(米光 一成)