第24回 アニメーション部門 ソーシャル・インパクト賞
ハゼ馳せる果てるまで
ミュージックビデオ
Waboku[日本]
作品概要
音楽ユニット「ずっと真夜中でいいのに。」のミュージックビデオ。エネルギッシュなハイトーンボイスで歌われる、疾走感あふれるサウンドに合わせ、仲間や過去に別れを告げて一人宇宙へ旅立つ少女の、回顧と顛末が描かれた。冒頭、普段着から宇宙服のような服装へと変わった彼女。その後は、マイクを持って歌ったり、宇宙をサーフボードに乗って駆け抜けたり、宇宙船のなかでジュースを飲んだりモニターを眺めたり、リズムに合わせて踊ったりと、歌詞やメロディーに合わせてアニメーションが次々に展開していく。へんてこな生き物、荒廃した場所などのカット、時折現れる古代文字のようなフォントによって、ポップでありつつもどこか退廃的な世界観を示した。さらに、白と黒の縞の頭巾をかぶった謎の人物と少女のシーンには、その関係性を想像させられる。一つのストーリーをたどるのではなく、音楽を優先し、その魅力、イメージを増長させるようなつくりを目指した。
贈賞理由
ミュージックビデオ映像の役割は音がなくてもその楽曲を伝えることが重要で、作者の紡ぐ演出は映像だけでも曲の世界観を広げていた。初見はあえて音を消して鑑賞し、次は音もあわせて鑑賞してみたところ、映像だけの初見時に想像で聴こえてきたものに非常に近い曲が実際に入っていたのがその証拠だ。作者がこれからの世代のアニメーション作家を牽引する代表格の一人として、アーティストのファンや映像クリエイター志望の方などへ大きな熱量と希望を与えたという点に向けてこの賞を贈りたいと思う。作者のように個人単位でアニメーションに取り組んでいる世代の作品からはとにかく全フレームに「描きたい!」という気持ちがあふれ出ており、商用作品に時折出てしまう「描かされている」フレームがないのが本当に清々しい。この賞はそういった世代全体へのエールにもなればと願っている。(水﨑 淳平)