©︎ Marco Kohinata / Mina Sakurai / Shogakukan

第24回 マンガ部門 優秀賞

塀の中の美容室

⼩⽇向 まるこ/原作:桜井 美奈[日本]

作品概要

⼥⼦刑務所の中にある、⼀般客を受け入れてその髪を受刑者が切る美容室。取材のためにその美容室を訪れた週刊誌記者の芦原志穂は、多忙であるが故に恋人の奏に会う時間もつくれず、別れを切り出されていた。荒む心で刑務所に入る手続きを済ませ、塀の中の美容室へと向かう志穂。そんな志穂を待っていたのは、青空の模様に彩られた美容室と、重い罪で服役しながら美容師免許を取得した、受刑者の小松原葉留だった。髪を葉留に切ってもらいながら、少ない会話を通じて自らの心が解きほぐれていくのを感じた志穂は、より葉留という人物を知ろうとすることになる。志穂だけでなく、刑務官や葉留の家族らの視点から、葉留という人物を描くことで、その心が少しずつ明らかになっていく。原作となった小説をベースに、登場人物たちが持つ複雑な心情を繊細なタッチで表現し、悩みながらも前に進もうとする現代の⼥性たちの姿を、静謐かつ詩情豊かにマンガ化した作品。

贈賞理由

しっかりとした取材に基づき丁寧なペンタッチで描かれており、審査委員の誰もが上位作品に推していた。協議した点と言えば、審査で残ったほかの作品のほとんどは物語も絵もマンガ家が一人でつくりあげたオリジナル作品であるのに対し本作は原作があるという点だけであった。しかしこの作品は、原作も素晴らしく作画も原作に応えるように素晴らしい出来になっていて問題になるようなことではなかった。いち早く優秀賞候補に選ばれた作品である。優しいタッチの絵とゆったりとしたテンポで進むストーリー。優しい絵は決して手早く描かれたものではないだろう。作画にかかった時間だけ作者の想いが込められていて心が落ち着く絵である。マンガの場合ストーリーの良し悪しは構成、コマ割りの出来によるところが大きい。本作はコマ割りの良さに加え、台詞の簡潔さ、テンポの良さが作品の質を高めている。紙面からキャラクターの静かな息づかいが聞こえてくるマンガである。(倉田 よしみ)