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第17回 マンガ部門 大賞

ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険Part8―

荒木 飛呂彦

作品概要

M県S市杜王町。震災で隆起してできた土地である通称「壁の目」で、一人の青年が発見された。記憶を失っていた彼は「東方定助」と名付けられ、さまざまな手掛かりを基に自らの素性を探る。東方家の秘密と思惑、杜王町で起きた過去の事件、「定助」の素性をたどる重要な手掛かりとなる「吉良吉影」なる人物……さまざまな謎に「定助」は巻き込まれる。緻密なストーリー構成、超能力を目に見える形で表現することでマンガ表現に革命をもたらした概念“スタンド”によるバトルに加え、サスペンスにも更なる磨きをかけ、多くの読者を惹き付けた。

贈賞理由

人気のエンターテインメント作品であるというだけでなく、マニエリスティックとも評される個性的なヴィジュアル、奇想に支えられたトリッキーな演出、「少年マンガ」というジャンルにおけるコマ割り表現の可能性の追求、そして「人間讃歌」と称されるテーマ等で、人々を魅了し批評的な言説を含む豊かな語りに迎えられてきたシリーズの最新作である。今回の大賞は、本作のような充実した作品にメディア芸術祭が贈賞する機会を得た年次として記憶されるだろう。また本作は、東日本大震災を、作家が長年にわたり築き上げてきた壮大な物語世界に取り込んでいる。物語的な想像力を凌駕する巨大な現実に対し、虚構の側から怯むことなくアプローチし、そのうえで現実の側に差し戻すという困難を成し遂げていると言うことは許されるだろう。荒唐無稽に見える虚構を介することによって到達しうる水準があることを示し、改めてマンガ表現の持つ「力」を認識させた作品である。(伊藤 剛)