第14回 功労賞

栗原 良幸

マンガ編集者

プロフィール

1947年福岡県生まれ。70年に講談社に入社『週刊少年マガジン』の編集者となり、手塚治虫氏、ちばてつや氏、谷岡ヤスジ氏、みなもと太郎氏、本宮ひろ志氏などの連載を担当し漫画を学ぶ。80年に『月刊少年マガジン』編集長。82年以降は週刊『モーニング』および月刊『アフタヌーン』を創刊し、編集長として16年間に1000号ほどの本誌・増刊を世に送り出した。88年からは外国のマンガ家への編集活動を始めるとともに、雑誌に国際漫画奨励制度を設けて多くのマンガ関係者を招き、日本マンガの特質と普遍性を追求している。82年~98年の間に『モーニング』『アフタヌーン』を舞台に生み出されたマンガのうち、著名なマンガ賞を受賞したものに、さだやす圭/やまさき十三『おかしな2人』、小林まこと『What’s Michael?』、かわぐちかいじ『アクター』『沈黙の艦隊』、弘兼憲史『課長 島耕作』、青木雄二『ナニワ金融道』、岩明均『寄生獣』、山本康人『鉄人ガンマ』、王欣太/李学仁『蒼天航路』、鄭問『東周英雄伝』、新井英樹『宮本から君へ』、田中政志『ゴン』、山下和美『天才柳沢教授の生活』、藤島康介『ああっ女神さまっ』、沙村広明『無限の住人』、坂口尚『あっかんべェ一休』などがある。また秋月りす『OL進化論』、うえやまとち『クッキングパパ』のように現在まで連載が続いている作品もあり、江川達也『BE FREE !』、尾瀬あきら『夏子の酒』、鶴田謙二『Spirit of Wonder』、安田弘之『ショムニ』、わたせせいぞう『ハートカクテル』など演劇・映像化された作品も多い。さらに韓国の李載学『大血河』、黄美那『李さんちの物語』、呉世浩『水の国のアリラン』、台湾の鄭問『深く美しきアジア』、フランスのバル『太陽高速』、ボードアン『旅』、イタリアのイゴルト『YURI』、スペインのベネイト『カベル・イマジンズ』、アメリカのジョン・J.ミュース『空想の大きさ』など、日本のマンガスタイルに沿った海外マンガ家による書き下ろし作品の継続掲載で日本の読者を獲得し、母国でも出版されマンガ賞を受けるなどの評価を得ている。

贈賞理由

栗原氏は、数多くのマンガ家を成功へと導いた名編集長である。
『週刊少年マガジン』の編集者であった当時、低迷していた手塚治虫先生を担当し、久々の連載『三つ目がとおる』を大ヒット作へと導いた。その後、週刊『モーニング』、月刊『アフタヌーン』を創刊。初代編集長として両誌の編集長を兼務し、長きにわたり大勢のマンガ家を栄光のスポットへと送り込んだ。彼独特の弁舌は、作品の本質に鋭く迫るものであり、マンガ家たちを魅了し、創作意欲を鼓舞させた。『アクター』『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじ氏を初めとする、多くの一流作家たちが氏の影響を受け、ヒット作を世に送り出した。
また、海外の作家を日本に紹介することにより、国際文化交流にも尽力した。ことに台湾の鄭問(チェン・ウェン)氏は『モーニング』誌において10年近く連載を続け、活躍した。一方通行だった「マンガ」を、国際的文化交流の術として世界的に普及させ、今日の「マンガ文化」隆盛へと導いた立役者の一人として、氏の功績をたたえ、この賞を贈るものである。