©2014 Noramoji Project
写真:池田陽美│レタッチ:岩沢美鶴│撮影進行:上野山光貴│協力:
amana│音楽:土屋泰洋│のらもじから展開し仮名書体をデザインした人
たち:若岡伸也(ふじや)/吉富ゆい(つるや、フジヤ、タニヘイ)/関亜弥子
(万代スポーツ)/後藤萌(ヒロセ)/広川海(サン理容室)/久永真輝(シ
ミズデンキ)/泉湖奈(いがらし)│協力:江原創造/橘千春

第18回 エンターテインメント部門 優秀賞

のらもじ発見プロジェクト

ウェブ、オープンソースプロジェクト

下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也

作品概要

町のあちこちにひっそりと佇む看板の手書き文字には、データとしてきれいに整えられたフォントにはない魅力がある。不思議な愛らしさや人間味をたたえた「のらもじ」。このプロジェクトは風雨にさらされ経年変化し素材となじんだその様子に、デザイン的な魅力や古道具的、民藝的な魅力を積極的に見出し、愛でることから始まった。本プロジェクトでは発見した「のらもじ」を鑑賞し、形状を分析してコンピュータで使用可能なフォントを制作する。そのフォントはウェブ上で配布され、ユーザーはダウンロードのうえ「のらもじ」を使うことでその魅力を知ることができる。更に「のらもじ」を後世に残すサポートとして、フォントデータの代金を持ち主に還元している。本プロジェクトは、地方都市の景観の伝承であり、タイポグラフィにおける「民藝運動」ともいえる。

贈賞理由

高齢化、過疎化が進んだ地方都市で、地元商店街の風情を継承し、地域活性化を推進する取り組みはこれまでたくさん見られてきた。しかし、この試みはさすがに前代未聞だ。都市景観に昭和レトロな佇まいを色濃く残す、商店看板の手書き文字を保護し、それら一点もののタイポグラフィを形状分析の上、フォント化して、デジタルネットワーク上で配布するのだ。しかもデータの売り上げは持ち主に還元されるという。「のらいぬ」でも「のらねこ」でもなく、名もなき職人達が肉筆で描き、地元コミュニティに解き放ったこれら「のらもじ」は、セピア色のストリートに今もひっそりと佇むアルカイックなタギングである。そして保護された「のらもじ」たちは、フォントデータとして未来永劫(えいごう)生き抜くはずだ。そしてこのプロジェクトは今後、列島全域に発展させる計画らしい。これは、国土地理院もGoogleマップも発想できなかった「民藝運動」なのだ。(宇川 直宏)