©Cod.Act
Photo: Xavier Voirol

第18回 アート部門 優秀賞

Nyloïd

メディアパフォーマンス

Cod.Act (Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD)

作品概要

動きに連動する音響装置を携えた長さ6mの脚を持つナイロン製のトライポッド(三脚)が、まるで巨大な生物のように、複雑かつ有機的な動きと音を生み出す音響彫刻である。地面に固定されたエンジンの回転の影響を受けて、トライポッドは大きく湾曲し、ねじれていく。構造による抵抗と、ナイロン素材の弾力で増幅された力によって、時には大らかな弧を描くように舞い、時には苦悩するかのように地面に打ちつける。肉声を分解した音源が、動きに合わせて不断に組み合わされることにより、緊張感や怒り、親密さといったさまざまな感情を鑑賞者に想起させる。だが、まるで不気味な生物のようなパフォーマンスは、素材の性質、ミニマルかつ高度な機械構造、音の結合という完全に無作為な動きから生み出されている。

贈賞理由

第14回そして第16回文化庁メディア芸術祭で二度の大賞を受賞しているCod.Act。音楽家と建築家のバックグラウンドを持つ兄弟ユニットによる作品は常々、我々を魅了するが、今回の応募作品『Nyloïd』は、第14回に大賞を受賞した『Cycloïd-E』の延長線上にある作品ともいえるものであり、彼らのあくなき探究心をうかがうことができる秀作である。6mの巨大なナイロン製の三脚を持った彫刻作品の3本の「手足」の動きは、生物的なムーブメントのようでもあるが、完璧なコントロールは不可能という極めて制限的なものであり、この不規則な動きに電子音響が加わり、しなやかで官能的かつ力強くもありながら、どこか邪悪で畏怖の念すら抱かせる。メディアアートの特性でもある高度なテクノロジーを根幹に有しながらも、我々に作品の可動範囲や音響によってもたらされる空間認識、身体感覚そして感情の変容をもたらすものとして成立することが重要なのである。(植松 由佳)