© Filmakademie Baden-Württemberg, Institut für Animation, Visual Effects und digitale Postproduktion

第15回 アニメーション部門 新人賞

Rabenjunge (Raven Boy)

短編アニメーション

Andrea DEPPERT

作品概要

木彫りの人形たちが、巧みな3DCG合成によって動き回る幻想的なアニメーション作品。村の少年たちから蔑まれていたRabenjunge(カラスの少年)が、ある日やってきた美しい少女と出会うところから物語が展開していく。木片や草などの素材を用いた手作りの舞台を背景に、実写で撮影された人形の表情や動きをCG合成し、アナログとデジタルの境界を超えた不思議な世界を生み出している。

贈賞理由

パペットアニメを超えた大人のファンタジー
この作品を「ANIMATION」と呼ぶか、従来の概念では計りがたい。幻想絵画の妖精が「生きた表情を持つ操り人形」となって物語を紡ぎ出す、そんな夢を見たような映像なのだ。かつて人形劇はフィルムやテレビでアニメーション番組が普及する以前、世界中で子どもたちに「動くキャラクター劇」を鑑賞できる表現として繁栄した—日本でも人形劇からアニメーション表現に転身した作家はいる—この作品はそんな時代へのノスタルジーと、東欧に見受けられる含み毒のテイストが共存した美しい大人のファンタジーとなっている。作家の出身校、ドイツ Film Academy Baden-Württemberg は多くの才能を世界に輩出しており、コンピューター生成によるデジタル映像とアナログな素材、映画の制作技術などが柔軟に駆使される作風が特徴ともいえる。実際は合成用に撮影された操演パペットに3DCG生成した顔の表情をマッピングし、背景美術にデジタルコンポジット、という行程を踏んでいる本作品は「ストップモーションによるアニメーション」とは呼べない。しかし本来息づくイメージを映像にするという意味では「アニミズム」への現代ならではのアグレッシブなアプローチとも解釈できる。初見時の映像世界が放つ気配のクオリティも秀逸であり、その評価をもって贈賞理由とする。