第16回 功労賞

佐藤 茂

音響技術者

プロフィール

1936年生まれ。55年NHKに入局。NHK電子音楽スタジオのエンジニアおよび音楽番組チーフ・ミキサーとして活躍。60年から電子音楽制作用の機器開発やそれによる音声表現領域の拡大に貢献した。66年にカールハインツ・シュトックハウゼン作曲「テレムジーク(TELEMUSIK)」を制作、69年には大阪万国博覧会の日本政府館音楽の制作、73年初めて武田明倫作曲コンピュータによる「パノラミックソノール」の制作など、50曲以上の電子音楽作品の制作技術を担当してきた。その他、N響、音楽の広場、軽音楽、邦楽、学校放送とNHKの各種番組の音楽録音に携わってきた。90年、NHK音声部長に就任。93年に退職した。その後、電子音楽を歴史に残し誰もが自由に聴けるようにするため、まず1955─75年に制作された曲を、大阪芸術大学音楽工学OB有志の会の企画と公益財団法人ロームミュージックファンデーションの助成により『音の始源(はじまり)を求めて』というCDシリーズにまとめた(2003─)。今後も電子音楽のプロパガンダに努力していこうとしている。

贈賞理由

佐藤茂氏は、1955年に設立されたNHK電子音楽スタジオにおいて、故上浪渡氏、故塩谷宏氏らとともに長年にわたり技術者として勤め、電子音楽の黎明期に数多くの作曲家たちの作品制作を手がけられた。「作曲家のアイディアに合わせて専用の機械を作ってしまう」という氏も大いに貢献した独自のスタイルによってNHKのスタジオは現代テクノロジーと芸術との結節点を模索する場となり、また作曲家たちの思考実験の場となった。さらに、そこで生まれたアイディアの多くが後に電子音楽以外の作曲にも生かされ、器楽作品をはじめとする日本における現代音楽の創作にも少なからぬ影響を与えてきたという事実は忘れてはならないだろう。