©SAKAMOTO Ryuichi / MANABE Daito
サウンドプログラミング:濱哲史|ソフトウェア開発:比嘉了/登本悠介|ハー
ドウェア開発:原田克彦|制作協力:石橋素/高橋知宏/ Kyle McDonald
/蓬萊美咲|ウェブサイト:木村ヒロック/渡辺圭一郎|翻訳:空音央|協
力:株式会社ライゾマティクス/ソニー PCL 株式会社/株式会社イースタ
ンサウンドファクトリー [札幌国際芸術祭 2014(SIAF2014)出展作品]
Photo: Keizo Kioku, Courtesy of Creative City Sapporo International Art Festival Executive Committee

第18回 アート部門 優秀賞

センシング・ストリームズ ―不可視、不可聴

メディアインスタレーション

坂本 龍一/真鍋 大度

作品概要

人間が知覚できない電磁波を感知(センシング)し可視化・可聴化するインスタレーション作品。本作は、札幌駅前地下歩行空間(チ・カ・ホ)、モエレ沼公園内ガラスのピラミッドの札幌市内2 ヵ所で展開された。モエレ沼公園では、設置されたアンテナが電磁波を収集、そのデータが巨大な自発光型超高精細大型ビジョンとスピーカーを通じてリアルタイムで可視化・可聴化された。鑑賞者はコントローラーで周波数を変更することができ、同時に存在するさまざまな電磁波を、絶え間なく変化するヴィジュアルとサウンドで体験することになる。加えてチ・カ・ホで記録した電磁波と対比することで、場所と時間に応じて、電磁波に生じる顕著な差異が明らかになる。現代では、必要不可欠となったインフラでありながら、普段意識されることのない電磁波の流れ(ストリームズ)を多様な形で顕在化させることで、私たちに電磁波を意識させ、携帯電話やスマートフォンを通じて能動的に関わっていることを喚起する。

贈賞理由

本作は坂本龍一と真鍋大度により札幌国際芸術祭2014のために制作された作品だ。電磁波に焦点を当て「可視化、可聴化する」というコンセプトに二人のアーティストがコラボレーションという形で答えている。携帯電話、ラジオやテレビなどから発せられる異なる周波数を持つ「電磁波」は、生活環境の中でどのように存在しているのか? 私たちは日頃、目や耳から得られる情報を元に考え、判断し、行動している。本作が興味深いのは、その「電磁波」と札幌の地下に流れる「水脈(ストリームズ)」とを重ね合わせ、直接は見えないが確かに人間の生活に影響を与える存在を、感じ取ることができる情報に変換しているところだ。誰もが鑑賞できるようにすることで、認識できなかった存在を改めて意識することを促している。また、本作で使用された4K VIEWING®による大型ビジョンには、1mm SMD(基盤表面実装型)が1.9 mmピッチに配置され、超高精細の画像解像度だけではなく、その表面の質感とともに新たな表現を可能にしている。(高谷 史郎)