©︎ Lauren Lee McCarthy / Photo: Stan Narten

第23回 アート部門 ソーシャル・インパクト賞

SOMEONE

インタラクティブアート

Lauren Lee McCarthy [米国]

作品概要

鑑賞者がAIアシスタントとして一般家庭に介入する作品。4組の参加者の家に、カメラ、マイク、照明、コンセントなどの特別に設計されたスマートデバイスを設置する。それらはギャラリー内に設えた、4つのコンピュータを備えたコマンドセンターとつながれている。参加者の家のデバイスが「オン」になっている場合、ギャラリーにいる鑑賞者はコンピュータを介して各家庭をのぞき、ネットワーク接続されたデバイスを遠隔操作できる。また、鑑賞者はAIアシスタントとして参加家庭の居住者の呼びかけを聞き、彼らの要求に応えるよう促される。そこに現れる関係性は、「人間と機械」でも「人間と人間」でもない、その中間の不明瞭な領域のものとなる。本作はスマートホームについて、親密さと内密さ、利便性と代行機関との間にある緊張と、さまざまなものが自動化した将来における人間の労働の役割について考えるものである。

贈賞理由

鑑賞者自身が、Amazon Alexaのような人工知能のデバイスとなることで、4組の人々の生活を擬似体験する。本作は、人間がAIの立場となって振る舞うことで、現代人の生活に浸透し身体化されているテクノロジーと人間との関係を批評的に可視化しようとする。音声と映像によって登場する生活者は、目に見えない「誰か」に話しかけることで、自動化した日常生活を成立させている。人々が「誰か」に話しかける親密さは、帰宅時に出迎えてくれる、身近な家族のような存在に対する関係に近いかもしれない。一方で、擬人化されたインターフェイスは、人間とテクノロジーとの新しい関係を生み出すことができるのだろうか。私たちは誰に向かって話しかけているのだろうか、「誰か」とは誰なのだろうという、現代生活のなかで生み出されている新たな問いが浮き彫りにされている。(田坂 博子)