©2013 Sports Time Machine
ディレクター:犬飼博士/安藤僚子│プログラム:岡本美奈子/大石みかげ/福田達也/大井亮治/島田卓也/山下寿成/志良堂正史/牧野覚│コーディネイト:河口隆(アワセルブズ)/曽田元子(YAN)│サウンドディレクション・作曲:高橋琢哉│効果音制作協力:浜田祐樹/梅田賀仁(東京工芸大学 MUSICOGEI)│イラスト:納口龍司│アートディレクション:Henki LEUNG /土屋弘美(Airside Nippon)│会場デザイン:赤間萌美/野崎真希子(デザインムジカ)│ナレーション:萬治香月│動物監修:秋吉台サファリランド│会場設営:伊藤馨(OTTI)/岡田正明(有限会社イング)/ 07サークルセブン/山根晃/Black Peace /松代明准/長野泰之/山縣政則/八木健人│制作協力:山口情報芸術センター[YCAM]

第17回 エンターテインメント部門 優秀賞

スポーツタイムマシン

メディアインスタレーション

犬飼 博士/安藤 僚子

作品概要

本作は、壁に投影される昔の記録と実際に「かけっこ」できる装置で、「山口情報芸術センター[YCAM]10周年記念祭」をきっかけに誕生した世界で最初の“スポーツのタイムマシン”である。過去の自分や、家族、友達、動物の走った記録に挑戦でき、自身の走った記録は3Dデータで同時に保存される。「走る」という行為が思い出だけでなく、メディアとして存在し続けることの面白さに着目した本作は、スポーツを通じて、過去、現在、未来を横断した身体コミュニケーションを提供する。山口市の多くの市民の協力のもと、商店街の中に設置され、展示期間中は「大メディア運動会」と称した祭りやワークショップを開催。多くの笑顔を生み出した。また、市民が自ら長期的に活用する方法を考える会議を開き、ウェブサイトなどの機能拡張も続けられている。

贈賞理由

2013年の夏、山口市内の商店街に『スポーツタイムマシン』はあった。そlこに集まったみんなが全力疾走していた。私たちの日々の暮らしで「走る」ことは抑制されている。そのためこの行為がもたらす原始的な快楽は忘れがちだ。その代替か、アクションゲームの中で私たちは走る。Bボタンダッシュの感覚は身体レベルに刷り込まれている。このズレを『スポーツタイムマシン』はゲームキャラクターとプレイヤーを等身大にすることで解消した。また、プレイヤーの運動データは壁面に「影」として投影される。多くの「かつて走った影」を眺めていると、1960年代の高松次郎の絵画作品が想起され、そしてこの連想は「原爆の影」に行き着く。原子爆弾とコンピュータゲームの誕生は科学技術の歴史において表裏の関係だった。こうした文脈が折り重なるフィールドをプレイヤーたちは全力で走り抜けていく。汗をかいて大笑いしながら。その屈託のなさが美しい。(飯田 和敏)