© Taiyo Matsumoto / Shogakukan

第20回 マンガ部門 優秀賞

Sunny

松本 大洋[日本]

作品概要

『鉄コン筋クリート』『ピンポン』『GOGOモンスター』『ナンバーファイブ 吾』―未来、スポーツ、異界、SF、あらゆる世界で、体と心を躍動させる少年たちを描き続けてきた作者が、親と離れ児童養護施設で過ごした自らの少年期に思いを馳せつつ描いた作品。問題児で、ある事情から白髪になってしまった春男(はるお)、横浜からやってきた真面目でガリ勉タイプの静(せい)を中心に、純助(じゅんすけ)、めぐむ、きい子、研二(けんじ)ら、「星の子学園」にはいろいろな事情から齢も境遇も異なる子どもたちが親と離れて暮らす。園の片隅に放置された自動車「サニー」は、子どもたちの遊び場であり、教室だった。「学園の子」同士の友情やけんか、学校の同級生ら親と暮らす「家の子」たちとの交流、学園のスタッフである足立(あだち)さん、自分の親との微妙な関係など、日々起きる大小さまざまな出来事を通して、少しずつ成長していく子どもたちの心情を描く。

作品概要

子どもの不幸は自分では何も選べない不自由さにあると思う。誰と一緒に暮らすかも、どこで暮らすかも選べない。しかし希望が叶えられなくても簡単には絶望していられない。大人はその場しのぎの幸せな嘘をついて逃げていき、不幸な重い現実を子どもに背負わせるけど、子どもが嘘をついたり逃げたりは許されない。「星の子学園」では家庭の事情と理不尽な感情を抱えた子どもらが暮らしている。みんな他人で、文房具は誰かのお古。庭に放置された廃車のサニーは乗れば空想のガソリンを満タンにしてどこにでも行けるけど、降りれば元の場所だ。マンガのなかにいくつか出てくる当時の昭和歌謡のように、状況はくどくど説明されず、どうにもならない感情の景色はたっぷりと描かれている。自分の子どもの頃の寂しさや大人になってからの後ろめたさに似た気持ちが拾いきれないほどにそこにある。サニーに乗り込むようにこのマンガを開くたびに見つける感情がある。(松田 洋子)