©︎ 2019 Hikaru Morishige/Daisuke Ozasa

第24回 アニメーション部門 新人賞

海辺の男

短編アニメーション

森重 光/小笹 大介[日本]

作品概要

とある島で巨大なエビのような生物「オオニュウドウ」の研究をしている男が、島での様子を切り取った映像とともに、自らの研究について淡々と説明する3DCGアニメーション。兵庫県出身で観測所に所属しているという彼は、オオニュウドウを「彼女たち」と呼び、海岸に打ち上げられたオウニュウドウの死体処理を行ったりしながら、なぜ死んでしまうにもかかわらず陸に上がってくるのか、研究しているという。実際には存在しない生物とそれに付随するあり得ない研究を、モデルやモーションのつくりこみ、また細かい設定によって、リアリティをもって描出。ゲームエンジン「Unreal Engine 4」を用い、従来の3DCGアニメーションとは異なるアプローチで制作された。

贈賞理由

観たあとの余韻の強さがあった。監督の「観察」という「引き」の感覚が魅力的な作品となっており、現実社会を想起させ、「逃げ」を打たない強いメッセージを汲み取れた。表現はついつい足し算のレールに乗せてしまいがちで映像化した時点でファンタジーとなるが、一見ネガティブに映る荒涼たる引き算のなかに、彫塑として大事なことを雄弁に語ることが可能だ。この作品はイマジネーションを豊かに広げるショートムービーとしての役割をまっとうしていると感じた。これからの作者の視点、作品が楽しみだ。(小原 秀一)