©︎ 2020 hayate kobayashi

第24回 アート部門 新人賞

灯すための装置

映像インスタレーション

小林 颯[日本]

作品概要

個人的な記憶に基づく短編アニメーションを、小型のレーザープロジェクターとロボットを用いることによって、新たな形式による上映を試みた作品。2台のロボットは、部屋をあちこち行き交いながら揺らめき、像を投影する。映像のタイミングに合わせて、ロボットが動き出す。白線の手描きのアニメーションは、プロジェクターの特性からぼうっと壁面に浮かび上がり、振付のごとく振る舞う。ぼけては動き、電池が絶えるまで灯し続けるぎこちない映像は、幻燈や写し絵を連想させ、メディア考古学的な観点も示唆する。これらの構造的、文脈的操作によって、鑑賞者の眼前にアニメーションが「いる」感覚をもたらすことを試みる。

贈賞理由

「映像を壁や床に投影すること」の本質に立ち返り、小型プロジェクターとマイクロコントローラと自走移動可能なロボット(作者いわく「野生のプロジェクター」)の組み合わせで、映像のフレームの外にある風景も含めた映像世界をつくり出した。大変興味深いチャレンジであるとともに、新人賞にふさわしい新鮮さも感じた。そしてこの先にまだ多くの表現の可能性が秘められているようにも感じる。今後も期待したい。(八谷 和彦)