© 東京マグニチュード8.0製作委員会

第13回 アニメーション部門 優秀賞

東京マグニチュード8.0

テレビアニメーション

橘 正紀(監督) [日本]

作品概要

夏休みのお台場に2人きりで遊びに来ていた未来(13才)と悠貴(9才)の幼い姉弟は、マグニチュード8.0の大地震に遭遇!崩壊した街を前に、絶望する人々…。 姉弟は、偶然出会ったバイク便ライダーでシングルマザーの真理と共に、それぞれの家族の待つ家を目指す。はたして3人は無事、愛する家族と再会することができるのか。

贈賞理由

すべてのアニメはフィクションでありファンタジーだ。たとえ事実に基づいた物語であろうとも。かつて、この種の題材を扱った作品の多くが、その恐怖を迫真に描写しようとして、作画、美術に高いクオリティを求め、そのことで作品をいっそう「優れた空想(ファンタジー)」としてしまっていた。しかし、震災とは「現実」なのだ。本作のスタッフはそのことに対しきわめて自覚的だ。中盤からの展開で、本作は単なるファンタジーから超現実になった。多くの視聴者が終盤に主人公の姉がたどり着いた場所に心を震わせたはずだ。父、母、兄、姉、弟、妹、祖父、祖母、恋人、親友など。本作は私たちの暮らす世界のもろさを思い知らせてくれただけでなく、何気ない日常でこそ大切にしなくてはならないものを思い出させる。明日、私たちの大切な人は失われてしまうかもしれないのだ。本作の表現する「喪失感」は本物であり、その意味において他に類をみない傑作である。