第25回 功労賞

刀根 康尚

サウンドアーティスト/作曲家/パフォーマンス・アーティスト

プロフィール

1935年、東京都生まれ。千葉大学卒業。1958年に即興演奏を始め、小杉武久、塩見允枝子、水野修孝らと結成した即興音楽集団「グループ・音楽」は、日本初の即興演奏グループとなった。1962年に一柳慧を通じて知り合ったジョージ・マチューナスの誘いでフルクサスに参加。さらにハイレッド・センターやチーム・ランダムなど、多くの前衛芸術運動に関わった。現代美術評論家としても知られる。1972年に渡米し、活動拠点を米国に移してからは、ジョン・ケージなどとも交流し、数々のイベントに参加。制作物のなかでは特に音楽作品がよく知られており、CDの盤面にスコッチテープを貼り、プレイヤーの読み取りのエラーによるノイズを発生させる、またAIを取り入れ、バーチャルな自身の演奏を自らが妨害することにより、パフォーマンスが成立するという表現手法などを用いた。無数の国際実験音楽祭に招待され、2002年には、プリ・アルスエレクトロニカでデジタル・ミュージック部門の金賞を受賞した。

贈賞理由

刀根康尚は戦後日本のアヴァンギャルドを代表する作家の一人である。1950年代から「グループ・音楽」や「フルクサス」などの先駆的なアーティスト集団の創立メンバーでありながら、膨大な数の作品や評論によって、従来の「芸術」の定義を根本的に見直し提示した。小杉武久、久保田成子、飯村隆彦らの国際的に活動し続けた一連の作家とともに、東洋の哲学、美学、そして発明の精神を世界に伝えた。その思想に伴う「予想外」の探求という、氏の芸術とテクノロジーへの独特なアプローチは若手作家たちに多大な影響を与え続けている。(クリストフ・シャルル)