© Fumiyo Kouno / COAMIX

第8回 マンガ部門 大賞

夕凪の街 桜の国

こうの 史代 [日本]

作品概要

昭和三十年。ヒロシマを舞台に、一人の女性の視線で描く、原爆投下の現実とその後の日々。市井の人々にとって、戦争とは何だったのか、原爆とは何だったのかを問う作品。

贈賞理由

長くてスケールの大きい作品と競って少しもひけをとらずに、最初の段階から高い評価を受け続けたこの作品は、完全に戦後世代の作家が描いた「ヒロシマ」の物語。たった100ページでありながら、「戦争を知りようがない世代にとっての戦争の影」を見事に描き出している。父母から子の世代への願いや受け継がれる記憶や価値観の微妙な違いをいとおしく綴って、力強いメッセージ性を持ちつつも、押しつけがましくならずに読者の受容を喚起する、独特の表現方法に感服した。