第7回 アニメーション部門 講評
今回は、長編と短編に大別して候補作を選び出し、それらを突き合わせて最終的に受賞作品を決めた。娯楽的な長編作品群には安定した表現技術がまず求められ、個人制作的な短編作品群には独創性や芸術性がまず問われる。この両者を同一の基準で評価することは不可能なので、審査は難しかった。長編作品の多くは一定以上の技術水準を充たしていたが、内容と表現の点で讃えなければならないほどではなく、短編作品の多くも、独創性と芸術性が豊かであるとは言いがたかった。大変残念である。
『連句アニメーション「冬の日」』は、「座」の文学、すなわち連想・連作による合作という日本の文化伝統を、複数の作家のアニメーションで追体験しようとする大変野心的な企画。様式も技法も異なる国内外の作家達35人を集めて、このような無謀な試みを成功させたことは今年度の快挙であり、大賞は当然だった。技法のデパートとしての面白味もあり、発句のノルシュテインはじめ、中に珠玉の傑作が含まれていることにも注目した。『東京ゴッドファーザーズ』は、実力のある監督が巧みな演出で、現実性のないお話に、ある種の現実感を与えてみせた娯楽大作。大賞に、という声もあったが、問題なく優秀賞に決まった。誇張された人物を作り、その台詞表現で三人三様のいわゆるキャラクターアニメーション(性格描写)を試みたことも評価された。
『ガラクタ通りのステイン』は架空の小世界と人物で小寓話を語るという可能性を示し、『FRANK』は原作マンガの擬古的な味をよく出している。また『こまねこ』は愛らしく、奨励賞の『星の子』は丁寧な仕上がりで、それぞれ好感の持てる作品だったが、いずれも審査員全員を感服させるほどの力があったとは言えない。
結果的に、長編よりも短編的作品の受賞数が上回ったのは、いわばすべてが奨励賞であり、長編への刺激も含め、日本のアニメーションが今後さらに多様な発展を遂げるための励ましの意味も大きい。