7回 アート部門 講評

【作品カテゴリ別講評】インスタレーション

今回、国内外から若い世代の秀逸なメディアアート作品が数多く応募されてきたが、それらの作品の差は記録映像のクオリティーにあるのかもしれない。特にインスタレーションという空間表現は、その場に居合わせるからこそ、身体との対話が可能となってくる。現状では審査対象となる作品の記録映像が、いかにその空間性を明確に打ち出し、他者の視点を持って客観的にプレゼンテーションされているか、という点が評価の焦点となってくる。応募作品はインタラクティブ性においても優れていた。しかし、あえてインスタレーション作品として応募してきた背景には、作品がその空間表現や背景にあるコンセプトに軸をおいていたからであろうと推測される。優秀賞『Venus Villosa』では、女性の胸を象徴したインターフェイスに触れることによって、従来美しいはずの女性の体毛が成長していく。これは、原始性とセクシュアリティについての根本的な関係性を考えたジェンダー色の強い作品である。審査委員会推薦作品『この資料は正確ですか?』では、生の花と造花が共に青いインクの入った花瓶に生けられ、その展覧会はネット上でも公開され、最も閲覧者が多い花だけが水を変えられていく。時間軸と共に朽ちていく生花と生き生きと見える造花という対照を背景にデジタルメディアの現状を暴いていく。全体的には、形態をアナログ化し、身体性を取り戻すための装置としての空間構成やデジタル空間に実存を追求していた作品が多かった。

プロフィール
三上 晴子
アーティスト/多摩美術大学助教授
1961年生まれ。アーティスト。多摩美術大学メディア芸術コース教授。84年から情報社会と身体をテーマとした大規模なインスタレーション作品を発表。90年代から現在まで、視覚、聴覚、重力などの知覚によるインターフェースを中心としたインタラクティブインスタレーションを発表し続け、その作品は毎回、海外10カ国以上を巡回展示している。