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第12回 アニメーション部門 優秀賞

こどもの形而上学

短編アニメーション

山村 浩二 [日本]

作品概要

数字で満杯の頭、チャックされた口のなかにあるチャックされた口、巻きとられる顔、魚にサポートされる両目など、子どもの身体をデフォルメしつつ、その生態を巧みに捉え、子どもを取りまく現状をユーモラスに、風刺的に描いた哲学的な山村ワールド。

贈賞理由

作者は、いまや日本を代表するアニメーション作家であり、海外でもその作品は高い評価を受けている。いつも優れた作品をエネルギッシュに創作し、今回の文化庁メディア芸術祭にも複数の作品を応募いただいたが、いずれも魅力に満ちた力作揃い。そのなかでも本作品は、子どもの世界や頭のなかを考察し、哲学的なユーモアを交えたアニメーション表現でユニークな作品に仕上げている。学校と塾を往復しているような子どもの頭のなかはいつも数字が浮遊しているし、本に夢中の子どもは本の顔になり、抑圧されたものを「ワーッ!」と蹴飛ばしたい子どもの気持ち、哀しい顔は無理に笑顔に…でもやっぱり哀しい顔。いくつもの顔を隠し持つ怪しげな子どもや、悲しい涙は自分のなかにしまい込んでしまう子ども。決められた形に自分を合わせようとする子ども。あちこち見たり聞いたりして自分を失っていく子どもなど、この子どもたちの姿に笑いながら、実は我々人間自体の風刺なのだと気づく。作者の鋭い観察眼と表現技術が生みだした秀作である。