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第20回 アニメーション部門 優秀賞

映画『聲の形』

劇場アニメーション

山田 尚子[日本]

作品概要

大今良時(おおいまよしとき)のマンガ『聲の形』(講談社、2013―14)を映画化した劇場アニメーション。人と人とのコミュニケーションにおける、伝えることの難しさやそれゆえの尊さが表現されている作品。「退屈すること」を何よりも嫌う小学生のガキ大将・石田将也(いしだしょうや)は、転校生で聴覚障害を持つ少女・西宮硝子(にしみやしょうこ)と出会い、無邪気な好奇心を持つ。彼女が来たことを機に、将也は退屈な日々からは解放されるが、硝子とのある出来事がきっかけで周囲から孤立してしまう。それから5年の時を経て、2人は別々の場所で高校生へと成長した。しかし将也は、5年前の出来事以来固く心を閉ざして、生きる希望を見失っていた。人生を終わらせることを決意した将也は、5年前の「忘れ物」を返すために硝子のもとを訪れる。本格的な手話表現と現代の若者の内面を丁寧に描き、ひとりの少年が、少女や周囲の人たち、そして自分を受け入れていく物語が描かれている。

贈賞理由

良くも悪くも、人間も組織も同じ地平にはとどまっていられないのだとスクリーンを観ながら感じていた……。私の知る京都アニメーションも山田尚子も『涼宮ハルヒ』シリーズ(2006、09、10)であり、『けいおん!』(2009、10、11)であり、『たまこラブストーリー』(2013)であったのだが、2年ぶりに観たこの作品は私の思い込みを大きく超えていた。プロデューサーをはじめとするスタッフ全員が取り組んだのは難しいものをいっぱいに抱えた素材であり、それへのチャレンジであった。大いなる勇気を感じる。原作マンガから、映画という表現に歩み出すとき、この作品には誰でもが努力を要するであろうと考えざるをえない2つの要件があったはずだ。それは“動き”と“音”―ここが見事であった!よくやったなあ!と心からスタッフを讃えたいと思う。成長期に直面する他者とのコミュニケーションの難しさやいじめなどの複雑な問題を含む内容を、今までに磨き上げてきた表現技術とその魅力で包み込み、見事に一編のアニメーション映画に仕立て上げている。(髙橋 良輔)