© 2018 ReKOGEI

第23回 アート部門 優秀賞

between #4 Black Aura

メディアインスタレーション

ReKOGEI(代表者:石橋 友也) [日本]

作品概要

漆の持つ美的質感に着目し、3DCG/3Dプリンティング技術を導入して、漆の持つ魅力をテクノロジーの視点から探求すると共に、その造形性と制作プロセスを拡張するプロジェクト。漆の質感をシミュレートしながら造形データを作成し、3Dシミュレーションの衝突実験によって、四角い布に造形物を突き刺さしたような、手業で再現するのは困難な造形を導き出した。データは3Dプリンターで出力され、漆職人の手によって何層にもおよぶ漆塗りと研磨を施し、漆彫刻に仕上げられている。さらに、漆彫刻を3DCGのレンダリング画像の構図やライティングを模倣して撮影した。こうして撮影された写真とレンダリング画像は、遠目では同じに見えるが、よく見ると微妙な差異が見出せ、この差異から漆の本来的な魅力についての考察を行った。本作は伝統工芸の技術・歴史・美学をテクノロジーの視点から見つめ直すことを目的とし、漆の魅力を再解釈する「between」シリーズのひとつである。

贈賞理由

伝統工芸と情報技術の組み合わせは、重要だが意外ではない。またこの組み合わせにより、人の手を経ない数理デザインの実現や形=構造という乾漆の特性を現代に生かすことが目的なら、優れた先駆者がすでにいる。この作品のおもしろさは、彼らがユニークな仕方で漆の魅力を引き出したことにある。それが、謎の飛翔体が謎の布に衝突しメリ込んでいくという、かつて誰も見たことのない衝撃的な画像だ。この意味づけ不能のメリ込みは、それが進むにつれて複雑な襞を四方に走らせ、その波打つ襞が、流麗な飛翔体の表面とともに、漆に特有の微細なきらめきをひたすら際立たせていくのである。このきらめきを過去から語ったのが『陰翳礼讃』だとすれば、彼らの語りはたしかに未来的だ。しかしその画像が彫刻へ、さらにまた画像へと変換され併置されるときに生じる虚実という考え方そのものの揺らぎは、今私たちが生きる世界のありようにしっかりと接続されているのである。(秋庭 史典)