© Neil BRYANT

第16回 アート部門 優秀賞

Bye Buy

映像作品

Neil BRYANT

作品概要

『Bye Buy』は、絶頂期にあった1950年代、60年代の消費主義、および消費者についてのアーカイヴ映像をミックスし、それらを現代のイメージや記号、コードと合成したビデオ作品である。その風景や被写体、映像は、一見なじみのものであるが、実際は歪められ、時代から切り離されており、もはやわれわれの住む世界のものではなくなっている。資本主義と消費主義が過去のメディアでどのように表象されていたか、そしてそれらが現在において、いかに幼稚で古臭く、不適切に見えるものであるかを、この作品は遊び心たっぷりに検証する。人物の眼が巨大化しているのは、消費を求める原始的本能を意味している。それは飢餓状態にあり、けっして満足することがない。他方バーコードが表わしているのは、われわれが見ようとしない限り見えることのないある構造、あるシステムである。われわれ自身もまたこのシステムのなかで消費されていて、自らを消費すること、および他者を消費することにおいて共犯関係にある。

贈賞理由

似て非なるモノへと人間を変容させる手法として、登場人物の眼をすべて大きくしている。プリクラのように「眼」と認識できる部分を自動拡大して配する画像処理技術を使っているのだろう。眼の大きくなった人間が、化粧品やアイスクリームなど消費の対象物を持って微笑んでいる。巨大眼の人間は、消費主義文明に侵されて、欲望を肥大させた人間のようにも見えるが、モノトーンの古いコマーシャル映像を素材としているせいか、異国、異時代、異文化が醸し出す世界の遠さが、このフィクションを冷静に見る独特のスタンスをつくっている。その距離感も好ましい。「眼を大きくする」というのは単純なアイディアであるが、発想のユニークさと透徹した完成度の組み合わせによって、大きな成果を上げている。