フェスティバル・プラットフォーム賞
ジオ・コスモス カテゴリー
ちぎる
映像作品
秋山 智哉[日本]
作品概要
「ちぎり絵」によって展開していくストップモーション・アニメーション。「ちぎる」という言葉には、細かく切り離す「千切る」と約束を結ぶ「契る」の相反する2つの意味がある。新型コロナウイルス感染症の拡大によって人との距離が広がり、人種差別、性差別といった問題も浮き彫りになった昨今。そんな「千切る」ともいえる状態を、球形の世界地図が切り離されていくさまを通して表現した。しかしその後は、ちぎられた紙片によってモチーフが形づくられ展開していく。紙片たちは離れつつある人々の輪を描くも、やがては再生されていく地球の姿を映し出す。ちぎられた紙をつなぎ合わせていく、ちぎり絵の制作過程をも作品のメッセージの一部として昇華させた。2つの「ちぎる」を、ちぎり絵とストップモーション・アニメーションというアナログな手法を用いて表した作品。
贈賞理由
本賞ができて2回目となった今回は応募数も増えたが、本作品は圧倒的に完成度が高く、審査委員の意見はすぐに高評価で一致した。コロナ禍で人々の心がギスギスした状態が続くなかで、本作品は見る人が温かみを感じられる作品に仕上がっており、かつ、ジオ・コスモスという球体の特性を生かしたものになっている。特にコンセプトの軸となっている「千切る」と「契る」という言葉あそびと、その言葉にかけた表現手法の選択が、本作品の大きな魅力である。新型コロナウイルス感染症によってデジタル化が急速に加速するなかで、あえてちぎり紙とストップモーション・アニメーションというアナログ手法を生かすことは、デジタルだけでは表現できない温かさや手触り感を演出し、コンセプトの表現をより豊かなものにしている。また、球体の透明アクリルドームの表面に千切り紙を配置して球体の内側から360°カメラで撮影するという新たな制作手法へのチャレンジにも高い関心と期待が集まった。(水谷 仁美)